研究を行うようになって変わったことはありましたか?

難しい質問ですね(笑)。うーん、大学院に通い始めてひとつ変わったことは、「モノの見方」かもしれません。「何が正しい情報で何が不確かなのか,それは本当に正しいのか」、これは物事の「本質」を見抜く力だと僕は思っているんですけど、物事の本質を見抜く力が訓練されたのかなと。僕はまだまだですけどね(笑)。医療においてもたくさんの問題があると思いますが、その問題の「本質」を明らかにしなければ解決できません。そういった「本質を見抜く能力」,そして「問題を解決する能力」というのは社会人,診療放射線技師にとっても重要な能力だと思いますね。

 

先生(医師)からの質問に答えられなかったとき、どんな気持ちでしたか?

悔しさもあったんですけど、虚しさの方が大きかったですね。「(聞かれても答えられないなんて)何の仕事しているんだ。俺って(笑)」そういう感じですかね。

例えば、なんとなく答える、それこそある程度経験を積んでいる技師さんは経験があるから、なんとなく伝えられる。でも結局、なんとなくしか伝わらないし、先生が本当に求めている回答って、技師の方からなんとなくしか言えなかったら、先生もなんとなくしか受け取れないと思います。

 

周囲の技師さんを見ていてこのままではダメだと思ったのですか?

最初はそう(ダメだと)思うこともあったと思いますが、今は全く思わないですね。仕事に対する考え方は「それぞれ」なんだと思います。

あともう一つ思っているのが、僕は放射線技師の中で「はみ出し者」だと思っていて、僕みたいな人間ばかりいる必要はないと思っています。みんな一人の人間、それぞれの人生なので、それぞれの考え方で仕事をすればいいじゃないかなと。その中で,お互いの考えに共感して「一緒に協力できること」が最も必要なことだと思いますね。

 

 

自分自身を「はみ出しもの」と言う理由は何ですか?

そうですね、なんででしょうね(笑)。でも、結婚して、社会人になってまで大学院で研究やろうなんて思うのは、やっぱり「はみ出し」ものじゃないですか(笑)

具体的には,放射線技師の世界って、たぶんみんなが就職する頃には多少、層の入れ替わりがあると思うけど、上の世代っていうのは専門学校の卒業の人たちで、次の層っていうのは短大、次が大学、でも今はもう大学院ですよね。教育課程にもよるものかもしれませんが施設によっては研究する人はほとんどいないんですよ。例えば、8時半に出勤する、17時15分まで検査がみっちり入ります。8時間仕事をしますよね。そして、自分の研究をすると言ったら、仕事か仕事じゃないかで言ったらすごいグレーですけど、もし仕事でなければお給料もでない中、自分の時間を削って研究をする…研究が好きな人はいいんでしょうけど,好きじゃなかったら誰もやりたがりませんよね(笑)。

だけど、僕らの仕事に限った話ではないですが、「研究」は様々な意味で必要なことなんだと思います。だって技術の進歩がなくて「現状維持」であれば、周りが進歩している分それは「衰退」を意味すると思いませんか?

僕自身は「何かの役に立つ研究」ができたら面白いなーと思っていて研究活動を続けています。僕の職場ではなかなか少数派で「はみ出しもの」かなーと思います(笑)。だけど,学会はもちろん大学院に行けば自分と同じような考えを持っている人とたくさん出会うことができて、僕みたいな人は世の中にはたくさんいるだなと、研究を始めてから知ることができました。

それでも職場には僕の背中を押してくれて、僕の研究に付き合ってくれるスタッフがたくさんいるのでとても感謝しています。僕の気持ちに共感してくれる人も多いので本当にありがたいですね。

 

 

 

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